2008年11月19日水曜日

「財政支出によるマネー創出は、インフレでなく、デフレの長期化を推し進める」(中前忠)

今晩の日経「十字路」コラムで中前忠が今回の金融危機以降の世界経済を的確に描写している。米国発のデフレの長期化は、もはや避けられないようだ。

例によって圧縮した文章なのでわかりにくいが、要点:

  1. 消費不況は米国経済のデフレ化を招く。金融機関救済や景気対策のための財政支出によるマネー創出は、インフレではなく、デフレの長期化を推し進めるはず。日本の失敗の教訓である。

  2. 米国の消費不況にくわえて、その影響を最も受ける中国経済の減速がデフレ要因の第一。対米輸出が落ち、多国籍企業による対中直接投資が止まっている。バブルの崩壊や在庫調整はかつてない大幅なものとなろう。内需拡大は簡単ではない。中国経済の減速により資源価格は長期にわたって低迷する可能性が強い。

  3. 第二は、欧州経済の悪化がある。金融危機が米国より深刻。米国最大のJPモルガンの総資産はGDPの16%だが、UBSは390%、バークレイズ銀行は99%、ドイツ銀行は85%と異常に高い。銀行救済のために財政資金を投入すれば、銀行が大きすぎるので、国の信用度が問われてくる。欧州の銀行の総資産の株主資本に対する倍率もJPモルガンの15倍に対し、ドイツ銀行は56倍。(米国に)ドル安によるインフレはまず起こりえない。

  4. 第三は、金融の膨張が金融資産のリターンを押し下げる。これは日本の経験が示している。マネーの生産性の低下は超金利の定着を通じて経済の効率を落とし、経済を低迷させる。マネーの膨張が通貨危機をもたらさない限り(その意味では欧州やアジアの方がより危険である)、きわめてデフレ的だ。

  5. 経済政策に求められるのは、米国発のデフレ下でいかに成長していくかの戦略である。

デフレが長期化するのは避けられないとすれば、経済政策ばかりでなく、国民一人一人のレベルにおいても「デフレ対応型」生活スタイルへの見直し戦略が求められる。同じ今晩の日経夕刊の「生活」ページでは「高くても安心な農協の直売所で野菜を買いましょう」なぞ寝ぼけた特集が組まれていたが、こんなことをやっている場合じゃないのである。

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